あなたは、長年ひとつの業界でキャリアを積み重ねてきた人が次にどんな道を歩むか、興味を持ったことはありませんか?
ここでは、35年間のキャリアを航空業界で築き上げた元客室乗務員、渡辺久美子さんが、どのようにしてプロコーチとして新たなキャリアを切り開いたのか、そのリアルなストーリーをお届けします。
1-キャリアのスタートは客室乗務員
35年間、航空業界で客室乗務員として、そして管理職として活躍していた渡辺久美子さん。
そのキャリアは多岐にわたり、数多くの乗客に安全で快適な空の旅を提供するだけでなく、後輩たちを指導し、チーム全体のパフォーマンス向上にも尽力してきました。
彼女がキャリアの中で大切にしていたのは、「人をサポートする」という強い信念です。お客様に対してはもちろん、同僚や後輩に対しても、どのようにすれば彼らが最大限の力を発揮できるか、常に考えていたと言います。その情熱が、やがてコーチングという新たな分野に結びつき、渡辺さんの人生を大きく転換させることになりました。
「2010年まで客室乗務員として働いていましたが、管理職として部下をマネジメントする中で、コーチングに出会ったんです」と渡辺さんは振り返ります。
彼女は、客室乗務員として誇りを持ち、チームを率いる中で、従来の「指示・命令型」の管理手法に次第に限界を感じるようになっていました。
部下に指示を出すだけでは、自主的に動く力を引き出せず、モチベーションも上がらない。
「どうすれば、部下が自ら考え、行動できるようになるのか?」その答えを探していた渡辺さんは、ある研修で初めてコーチングの概念に触れることになります。
コーチングとの出会い
「本格的にコーチングを学び始めたのは2004年でした。管理職として、部下をどうサポートしていけばいいのかを考えていたときに、会社のコーチング研修を受ける機会があったんです。その時に、これは使えるなと感じました」と渡辺さんは語ります。
これまでの管理手法は、部下に具体的な指示を出し、それに従って行動してもらうというものが中心でした。しかし、コーチングではその逆で、部下自身が考え、自らの意志で行動する力を引き出すことに主眼が置かれていました。
当時、渡辺さんにとってこの新しい考え方は、すぐには馴染むことができなかったと言います。
「当時の私は、部下に主体性を持たせるつもりでコーチングを使っていたのですが、どうしても自分がリードしがちで、部下に任せることに不安があったんです。だから、コーチングの理論と実際のマネジメントがうまくかみ合わなかったんですね」
と彼女は振り返ります。
渡辺さんにとって、部下を信頼して自主的に行動させるということは、挑戦でもありましたが、同時に恐れもありました。
それでも彼女はコーチングの効果を信じ続け、さらに深く学びたいという強い意志が芽生え始めました。
そんな時、同僚の管理職から「COACH21」(現在のコーチ・エィ)のプログラムを紹介され、渡辺さんは本格的にコーチングの学びをスタートさせます。
自己の成長と共に、部下の成長を促すために必要なスキルを探求し続けた彼女は、次第にコーチングの力を確信していきました。
基盤を整えることの重要性に気づく
渡辺さんのコーチングに対する理解がさらに深まったのは、2008年に「ヘルスコーチ・ジャパン」に出会った時でした。
ヘルスコーチ・ジャパン代表理事の最上に紹介され、東京で開かれたヘルスコーチ・ジャパンの講座に参加したことで、彼女はコーチングにおいて「人生を豊かにする3つの基盤」という概念に初めて気づきます。
「基盤が整っていないと、人は本当の意味で行動を変えることができないと学んだんです。それまでの私は、行動に焦点を当てていましたが、実際に人を動かすためには、その人自身が自分をしっかり理解し、内面的な準備ができていないと、行動の変化は続かないんだと実感しました」と渡辺さんは語ります。
それまでの渡辺さんは、自分が部下を「動かそうとしていた」ことに気づきました。
しかし、ヘルスコーチ・ジャパンでの学びを通じて、人は外からの力で動かされるのではなく、内側から変わる必要があることに気づいたのです。
「この考え方に触れた時、私のコーチングに対する理解が一気に深まりました。それまではどうしてもうまくいかないことが多かったんですが、心の基盤・関係性の基盤を整えることで、部下が自発的に行動するようになるんです。これは私にとって、非常に大きな学びでした」と渡辺さんは当時の気持ちを振り返ります。
プロコーチとしての新たな道へ
2010年、渡辺さんは35年間務めた航空会社を退職し、プロコーチとして独立するという大きな決断を下します。
それまでのキャリアは、航空業界という安定した環境で築かれていたため、この転機には多くの不安が伴いました。
「退職するということ自体が非常に大きな決断でした。35年も働いた会社を離れることに、正直言って怖さもありました」と渡辺さんは当時の心境を振り返ります。
しかし、彼女の中には「自分の力で、もっと多くの人をサポートしたい」という強い意志がありました。
航空会社の中での管理職としての役割から、もっと自由に、そして自分らしく働ける方法を模索していた渡辺さんにとって、プロコーチとしての独立はまさにその道を切り開くための第一歩でした。
「他の会社に就職するという選択肢もありましたが、私はもっと自分のペースで仕事がしたかったんです。組織に縛られることなく、人をサポートする仕事を、自分のスタイルでやりたいという思いが強くありました」と渡辺さんは語ります。
独立後、彼女はパーソナルコーチとして1対1のコーチングを行う一方で、企業向けの研修講師としてもその活躍の場を広げていきました。
個人と向き合うコーチングでは、クライアントの内面的な変化を引き出し、持続的な成長を促すためのサポートを行い、企業研修では、チームのパフォーマンスを最大化させるための手法を提供しました。
「独立したばかりの頃は、やはり収入面での不安がありましたね」と、渡辺さんは当時の苦労を振り返ります。
「パーソナルコーチングだけでは安定した収入を得るのが難しかったので、並行して企業向けの研修講師の仕事も積極的に行っていました。
研修の仕事があったおかげで、経済的に何とかやっていけましたし、結果的に自分のキャリアにも幅が広がりました」と、彼女は語ります。
多様な価値観に気づき、成長する
コーチングの実践を通じて、渡辺さんが最も学んだのは「多様な価値観を受け入れる力」でした。
「最初の頃は、自分の考えが正しいと信じ込んでいて、それを相手に伝えることがコーチングだと思っていたんです」と彼女は言います。
しかし、実際にクライアントや企業のメンバーと向き合う中で、自分の視点が全てではないことに気づきました。
コーチングは、相手の価値観を尊重し、その人に合った方法で支援することが何よりも大切だと学んだのです。
「いろんな人と話をしているうちに、私は自分と全く異なる考え方がたくさんあることに驚きました。
最初は戸惑いもありましたが、次第にその違いを楽しめるようになったんです」と渡辺さんは語ります。
このように、多様な価値観や意見を尊重し、受け入れる姿勢が、渡辺さん自身の成長にも繋がりました。
「いろんな考え方に触れることで、私自身が楽になりましたし、周りの人との関係も良くなりました。コーチングを学んで本当に良かったと思います」と彼女は感慨深く振り返ります。
この成長を経て、渡辺さんのコーチングは、単なるスキルの習得にとどまらず、彼女自身の人生哲学を形成する大きな柱となっていきました。
「人生を豊かにする3つの基盤を整える」という考え方に出会ったことで、渡辺さんは他者をサポートするためには、まず自分がしっかりとした基盤を持ち、それを共有することが重要であることを強く感じました。
彼女のコーチングは、クライアントに「自分自身と向き合い、自己を深く理解する」プロセスを通じて、長期的な成長を促すものとなっています。
ヘルスコーチ・ジャパンでの役割とこれからの目標
現在、渡辺さんはヘルスコーチ・ジャパンでメンターコーチやクラスコーチとして、後進の育成にも力を注いでいます。
「私はヘルスコーチ・ジャパンで心の基盤・関係性の基盤を整えることの大切さを学びました。それを次の世代にも伝えていくことが、今の私の役割だと思っています」と彼女は語ります。
コーチングのスキルだけでなく、その背景にある深い思想を後輩たちに伝え、彼らの成長をサポートすることが、今の渡辺さんの使命だと感じているそうです。
彼女はまた、今後もコーチングの世界で人をサポートする仕事を続けていくつもりです。
「コーチングは、一度学んで終わりではありません。常に学び続けて、自分も成長していくことが大切です。これからも、コーチングを通じて多くの人をサポートし、自分自身も成長していきたい」と、渡辺さんは力強く語りました。
2-渡辺さんのこれまでのキャリア
渡辺久美子さんのコーチングに出会ってから独立するまでのプロセスを時系列でまとめると、以下のようになります。
2004年
渡辺さんは航空会社で客室乗務員として働いていたが、管理職になった際にコーチングに関する研修を受け、部下のマネジメントに役立てる可能性を感じる。
その後、先輩の紹介でCOACH21でコーチングの学びをスタート。
2006年
大阪に転勤中にPHPビジネスコーチングを学び始める。NLPを取り入れたビジネスコーチングを受け、心理学的背景も学ぶ。
2008年
ヘルスコーチ・ジャパンの設立に伴い、東京での講座を受講し、心の基盤・関係性の基盤を整えることの重要性を実感する。ここから本格的にコーチングに関わり始める。
2009年
ヘルスコーチ・ジャパンのメンバーとして参画し、アシスタントやクラスコーチとしての活動を開始。
2010年
35年間勤務した航空会社を退職し、独立する決意をする。
2011年
プロコーチとしての活動を開始する。パーソナルコーチングと研修講師としてコミュニケーション、コーチング、ビジネスマナーなどの分野で仕事をする。
3-コーチングで部下を育てる秘訣:マインドが変わると結果が変わる
ビジネスの現場で、リーダーは部下をどう動かし、成果を上げるかに日々頭を悩ませます。
しかし、ただ「動かす」だけでは本当の成長や成果は得られないことに、気づいている方も多いのではないでしょうか。
35年以上のキャリアを持つ渡辺久美子さんも、かつては「部下をどう効率的に動かすか」に焦点を当てたマネジメントを行っていました。
ところが、ある時、彼女は大きな壁に直面します。従来のアプローチでは限界があることを痛感し、コーチングを通じて彼女自身の考え方が大きく変わったのです。
渡辺さんのマインドがどのように変化し、部下を「動かす」から「基盤を整え継続的な変化を起こす」へと進化したのか。そのプロセスを知ることで、あなたのチーム運営にも新たな視点が生まれるかもしれません。
ビジネスコーチングを学んでいた時の渡辺さんのマインド
部下を「動かす」ことに焦点
渡辺さんは、主にビジネスコーチングを学び、部下の指導にコーチングを取り入れていましたが、この時の彼女の目的は「部下を動かす」ことでした。目標設定やフィードバックを通じて、どうすれば部下が効率的に動くか、成果を上げるかに意識が向いていました。
管理職としての責任感が強い
部下の成長を促そうとするものの、どうしても自分がリードしなければという意識が強く、「自分が部下をうまく指導して動かすべきだ」という考えが支配的でした。
行動にフォーカス
部下の行動を変えることに集中し、表面的な行動の変化に重きを置いていたため、持続的な変化が起こりにくかったことに悩んでいました。
ヘルスコーチ・ジャパンでの学びを経た後の渡辺さんのマインド
「基盤を整える」ことに焦点
ヘルスコーチ・ジャパンで学んだ渡辺さんは、「心の基盤・関係性の基盤を整える」ことの重要性を理解しました。
行動だけでなく、その人の内面的な状態、つまり「自分がどうありたいか」を深く理解し、それを整えることで初めて持続的な行動変化が生まれることを実感しました。
相手の主体性を尊重する
自分が部下を動かすのではなく、部下自身が自分の内なる力に気づき、主体的に動けるようにサポートする姿勢に変化。渡辺さん自身も、相手の内面に寄り添うコーチングの価値を深く感じるようになりました。
関係性の重要性
部下との関係を築き、信頼をベースにした対話を通じて、表面的な行動ではなく、部下の内面の成長に目を向けるようになりました。これにより、持続的な成果が生まれるようになりました。
4-渡辺久美子さんのプロフィール
名前: 渡辺久美子(わたなべくみこ)
職業: プロコーチ、研修講師
ダイアモンドコーチングサービス 代表
学歴および職歴:
東京都大田区出身。趣味はゴルフ、楽しい仲間との会食。
現在は、ヘルスコーチ・ジャパンのクラスコーチ、パーソナルコーチ、研修講師として活動中。
前職 JAL客室乗務員/客室マネジャーとして36年勤務。
2010年 日本航空を退職後、2011年 ダイヤモンド・コーチング・サービスを設立しセカンドキャリアをスタート。客室乗務員のマネジメント経験を活かし、在職中から学び続けているコーチングで一人一人の人生をより輝かせるサポートと共に、 組織に向けてビジネスコミュニケーション&接遇マナー研修、強みを活かしたチームマネジメント研修を提供。
資格:
国際コーチング連盟(ICF)認定プロフェッショナルコーチ(PCC)
NPO法人ヘルスコーチ・ジャパン認定 メンタルコーチ/ヘルスコーチ
日本教育推進財団認定コミュニケーショントレーナー
米国ギャラップ社認定ストレングスコーチ
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 認定トレーナー
DiSCスタイル: i
得意なコーチング分野: ビジネス, 顧客対応, ライフ全般, 基盤強化・メンタル強化
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