医療とコーチング
こんにちは、寒いですね。NPO法人ヘルスコーチジャパン メンバーの河野美保です。
2018年1月7日から2日間、株式会社アークレイさんの京都研究所をお借りして開催された糖尿病コーチング 〜スキル編 やる気を引きだす会話を学ぶ〜 の報告です。
よりわかりやすく、腑に落ちて、すぐ使えるようになっていただくために、ブラッシュアップされています。
アークレイ京都研究所は、江戸時代から続く日本庭園「擁翠園」(ようすいえん)の中に建っています。庭側は全面ガラスで、素敵な眺めに癒されます。しかし、ほんとうに京都は底冷えしますね。
糖尿病コーチングとは、糖尿病療養者の生活の中での目標達成と能力強化を促進する、認知、感情的、行動の持続的変化を支援する技術 です。
糖尿病の療養支援に関わっている方なら、一度は耳にする “エンパワーメント”。この素晴らしい概念を体現するのに、コーチングはとても適しています。でも、少しコーチングを学んだ方なら、こんな疑問が浮かぶはず。
コーチングは「教えない」「指示しない」のに、療養に必要な専門知識は、いつ どう教えるの??
糖尿病コーチングのスキル編では、その具体的な方法も、明確にご紹介しているんですよ。
【1日目】
オリエンテーション後、少人数のグループ(コミュニケーショングループ、以下コミグル)で それぞれの参加目的をシェアしました。人にも伝わる「言葉」にする事で、アンテナが立ち、周りの協力も得られて、達成しやすくなるからです。
糖尿病コーチングの全体像の説明がすみ、夏の「関係性編」参加者からの 自然体だけれど積極的な学びのシェアを聴くうちに、初参加で緊張した方も笑顔になって、引き込まれて行く様子があちこちで見られました。
つぎは、「コーチングサイクル」を意識した診療を生でみる事ができるコーナーです。患者役は1型糖尿病歴〇年の伊藤さん。半年に1回、大石まりこ医師に糖尿病コーチングを受けるこの機会をとても楽しみにしているそうです。
打ち合わせ無しのリアルコーチング診療を見学できるのは、ヘルスコーチジャパンだけです。終了後、参加者からの質問にもお答えします。
「コーチングを取り入れるといいとは思うんだが、時間が取られそう。」という心配も、毎回でる質問です。ぜひ、講座に参加して、大石さん、森岡さんに、直接お尋ねくださいね。
午後の講座開始前に、記念写真撮影。参加者27名とスタッフ11名
まだ2時間半しかいっしょに過ごしていないとは思えないリラックス感。
大石さんと森岡さんの実際の診療経験から提示される、患者さんの心理状態の4つのゾーン、名づけて [気分とやる気のマトリクス]。
目の前の患者さんが、どのゾーンにいるのかの見分けかた、前向きゾーンに移動するにはどんなコーチングスキルが助けになるのか、また、奈良医大糖尿病センターの石井均先生提唱の「変化ステージモデル」を知っている人も多いので、それとどう対応しているかなど、話は多岐に渡りました。
そして、解説を聞いて終わりではありません。 今回は基本のコーチングを落とし込むために、「前向きゾーン」の患者さんをコーチングする設定で講座が進みます。
治療上の目標の先にある、生活上の目標を明らかにする質問の言葉を考えます。このブログを読んでいる皆さんは、患者さんにきいてみたことはありますか? なぜ患者さんの生活上の目標をきく事が重要なのだと思いますか?
ワーク後の感想で、「今まで、患者さんと生活上の目標を共有するという視点が抜けていた。」という感想や、「生活上の目標を共有するのに、どう質問したらいいか、グループで出したり、全体でシェアしてもらわなかったら、職場に帰ってもうまくできなかったと思うので、難しかったけどよかった。」というがありました。そうです、みんなで考えて、みんなの引き出しを増やすのです。
その後、生活上の目標、夢を語って共有するワクワク感を参加者にも体感していただきました。「大人は、自分の夢を語る機会が減るけれど、人は客観性や妥当性だけでは動かない。感情が揺さぶられた時に動く!」のです。
最後に今日の振り返りコーチングをペアでやります。新たな気づきや学びの定着に効果があります。
上の3枚は、恒例の裏講座(別名 懇親会?)です。スタッフも併せて30名の参加者でした。
【2日目】
最初は、1日目の振り返りと、疑問点の質問作りをペアでやります。
あれ? 振り返りは、昨日の夕方にもしましたね? 実は、考えをまとめたり、気付きが形になるスピードは人によって違います。昨日とは違うことが浮かんでくる事も。安心安全の場で、こういう多様性も丸ごと受け入れる形で講座はつづきます。皆さんいい表情です。
コミグルで2日目の 参加の目的を明確にしたあとは、糖尿病コーチングの情報提供のスキルのコーナーです。大人の学びの特徴に合わせた伝え方の一例として、「サンドイッチのスキル」を紹介しています。
また、患者さんにとって必要な情報を知るための質問の言葉もみんなで考え、挙げていきます。情報提供の後は、患者さんと行動プランを立てます。ここでもレクチャーの後は、プランを立てるのに役立つ質問を考えます。どんなに小さいことでも良いので、患者さんとともに「やれそうさがし」をすることができるかどうか、その姿勢を患者さんは敏感に感じ取ります。夏の関係性編で学ぶことが大きく影響する部分です。
昼食休憩の後、1日目の患者Aさんを河野が演じ、情報提供に絞っての、森岡さんの糖尿病コーチング診療です。(前向きゾーンから外れないように、「薬は絶対嫌!」という設定にはしないとだけ打ち合わせ)
さあ、いよいよ総合練習!の前に、ちょっと気持ちと身体をほぐします。
ドラえもんドラミちゃんゲーム、進行役はアシスタントの松岡さん。皆さんの反射神経は??
総合練習始まりました。患者さん役になったときは、ご自身の健康ネタでコーチしてもらいます。2〜3人にひとりアシスタントがつき、7分ずつのコーチングです。
学んだことをもとに、コーチングサイクルを意識して実践してみよう! とは言っても、なかなか難しいものです。 私 河野は、3年半前はじめて受講者として参加した時、うまくやりたい気持ちが強過ぎて、普段の療養相談よりもうまくいかなくて、かなり凹んだ記憶があります。
そのあたりのこころの動きがなぜ起きるのかは、関係性編に譲るとして、今回はなんと、コーチングサイクルを自動的に経験できるように、サイクルの各部分で使う質問例をプレゼント。それでもやっぱりちょっと難しいかもしれません。
「コミュニケーションの癖は誰にでもあり、それを変えるということは、違うニューロンの回路を作るということ、それがきちんとつながり機能するには3週間かかる」
「自分の癖は自分が一番わからない。それについてフィードバックをもらえる環境を持つ。」
「相手の成長を心から願ってフィードバックする」
「フィードバックをもらうのはつらいけれど、プライドを捨てて受け入れるのが上達の道」そして
「コーチングという言語を新しく学ぶと考えること」という 最上さんの言葉を、参加された方と、未来の受講者に贈ります。
運営メンバーとアシスタント(ア)です
前列左から 森岡浩平さん(アドバイザー/医師)大石まりこさん(アドバイザー/医師)
濱本博美さん(ア)山下加代子さん(ア) 糸藤美加さん(ア)
後列左から 松岡幸代さん(ア)河野美保(ア)高橋美佐さん(講師/プロコーチ)
伊藤三恵さん(講師/プロコーチ/糖尿病患者)
最上耀未子さん(HCJ代表/プロコーチ)松下ゆきさん(ア)
次回の糖尿病コーチングは、「関係性編」です。2018年7月15(日)〜16日(祝)の2日間、
ぜひ、いっしょに学びましょう♪ お待ちしております。
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今回の報告担当は、河野美保 さんでした。
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