「秘書としてキャリアを積み上げ、広報へと挑戦を重ねてきた増田玲子さん。組織が変わり、異動があるたび、文化や価値観の異なる上司とも良好な関係を築いていました。しかし、ある日突然、人間関係の壁にぶつかることに……。
これまで当たり前にできていたことが通じなくなり、原因を探る日々が始まったのです。
本を読んでもわからず、悩んだ彼女が、コーチングと出会い、そして一つの筆ペンが人生を大きく変えることになるなんて、誰が想像したでしょうか?
増田さんがどのようにして自分を取り戻し、そして『筆文字アート』という新しい表現方法を通じて、仕事と人生を再構築していったのか。
彼女がどのようにして自分の新しい道を見つけたのか、その物語を一緒に追いかけてみましょう。」
増田玲子さんは、外資系企業で秘書として13年間のキャリアを積んでいました。秘書時代は、増田さんにとって、充実した職場環境に恵まれていました。そのときの仕事環境について増田さんは次のように語っています。
「自分の心の状態がいいと、そして関係性がいいと、コミュニケーションもうまくいくんですよね」
「たくさんの上司が変わりましたが、どの上司にも恵まれたおかげで、職場環境は非常に良く、楽しく仕事を続けることができました。」
しかし、13年という長い期間、同じ役割を続けているうちに、心に変化が起こります。
「秘書の仕事はやり尽くしたと思ったんです。実務をしたいという気持ちが強くなり、自ら異動を希望しました。」
増田さんが希望したのは「広報」へのキャリアチェンジでした。そして、社内広報の担当として新しい仕事に取り組み始めました。
社内広報の業務では、さまざまな社内メディアを通じて社長メッセージを社員に伝え、社内イントラネットに載せる記事を企画運営するなど、企業内のコミュニケーションを円滑にすることでした。
「社内広報の仕事では、学びと成長を感じていました。」
しかし、また数年が経過したころ、対外広報に異動となりました。
対外広報では、企業の情報を社外のメディアやパートナー企業に伝えることが主な役割です。新聞社にプレスリリースを送ったり、企業のイベントを企画したりするなど、社内に留まらず、広いネットワークを活用して情報を発信していくことが求められました。
対外広報に異動してからしばらくして、職場の同僚とのコミュニケーションにトラブルが発生しました。突然、同僚との関係がぎくしゃくし始め、これまでスムーズだった会話や調整がうまくいかなくなったのです。
「今まで普通に話せていたのに、急に相手の態度が変わってしまって……。自分が何か悪いことをしたのではないかと、原因を探り続けました。でも、何をしても状況は変わらず、毎日が辛い日々でした。」
何とか状況を打開したいという思いで、コミュニケーションに関する本を読みましたが、原因はわからないままでした。
「どうしてうまくいかないのか、どこに原因があるのか分からず、気落ちしていました。」
「アサーティブコミュニケーション」の研修に参加した時のことです。その研修で「相手の反応は怒り型、自分の反応は引き型であること。どちらも愛から発生しているが、表現が異なるだけだ」と学んで、衝撃を受けました。まさか、相手と自分の大元は同じ「愛」からだったなんて。自分の中で少し光が見えたような気がしました。
そして、同じ研修で隣に座っていたプロコーチの女性から「ヘルスコーチジャパンというコーチングのスクールがある」と勧められたことが、彼女のコーチングとの出会いのきっかけとなったのです。
「自分が今まで悩んでいたことが、もしかしたらコーチングで解決できるかもしれないと思い、迷わずコーチングの講座を受けることにしました。」
こうして増田さんのコーチングの学びがスタートしました。
最初の講座で学んだのは「セルフマネジメント」の重要性でした。
講座の中で「心の基盤」を整えるためのワークを通じて、自分がどれほど「相手の期待」に縛られて行動していたかを改めて認識した増田さん。
それまでは、他人の反応に過剰に反応し、自分がどうあるべきかばかりを考えていたことに気づきました。講座を受けていく中で「自分の心を大切にしながら相手と向き合うこと」がコミュニケーションの基本だということを実感したのです。
さらに、講座で学んだ「感情と責任の境界」を意識するようになり、対人関係でのストレスが格段に減りました。
増田さんはヘルスコーチ・ジャパンでコーチングを学び始めて1年目に、認定試験を受けることになりました。試験の中で増田さんは、かつて同僚と衝突した事例を体験談として話しました。すると試験官のひとり(最上)がこう言いました。
「それは相手の課題だよね。」
「最上さんに言われたときは、『えっ、あいての課題だったの?』と驚きました。でも、その一言で、『問題の本質は相手にあったのかもしれない』と初めて思えたんです。」
これまで増田さんは、他者とのコミュニケーションで起こる問題を「自分に責任がある」と考え、自分を責めてばかりいました。コーチングの学びを通して、相手の反応は必ずしも自分のせいではないこと、自分がすべてをコントロールできるわけではないことを理解したのです。
この瞬間を境に、増田さんは自分の心の状態を見つめ直し、「他者と自分の境界」を明確にすることで、コミュニケーションの悩みから少しずつ解放されていきました。
コーチングを学び続ける中で、増田さんは自分の「心の基盤」を整えることで、他人の目を気にしすぎることから解放される感覚を味わいました。職場でのストレスが激減したのです。
「自分がどう感じるか、どう行動するかは自分で選べるんだと分かってから、ずいぶん心が軽くなりました。」
さらに、コーチングを通じて「自分の強み」を見つめ直すこともできるようになりました。講座の中で他の受講生からフィードバックを受けたり、自分自身の価値を見直すワークを通じて、増田さんは「石橋を叩いて渡らないタイプ」から、「とりあえずやってみるタイプ」に少しずつ変わっていったのです。
「慎重すぎて動けなかった自分が、コーチングを通じて『動いてみる』ことができるようになりました。少しずつですが、新しいことに挑戦する勇気が出てきたんです。」
そのころ増田さんのキャリアに大きな変化が訪れます。
組織変更や上司の交代、担当業務の変更が重なり、これまで順調だった仕事にズレを感じるようになったのです。
「頑張って適応しようとしましたが、どうしても上手くいかず、次第に自分の心が疲弊していくのを感じました。」
これほど何もかもがうまくいかないことがあるなんて、まさに人生最大の転機でした。退職を決めたとき、もちろん「ここまで積み上げてきたものを手放して本当に良いのだろうか」という気持ちもありましたが、それ以上に「これが自分にとって必要な選択だ」と感じたんです。
退職を伝えたとき、上司や同僚たちはは驚きながらもこう言いました。
「増田さん、潔すぎるね。」
コーチングを学んでいなければ、退職の道を選べたかどうかはわからない、と増田さんは、感じています。
こうして、増田さんは会社を辞めることを決め、新しい一歩を踏み出す準備を整えました。
会社を退職した増田さんは、次のステップを模索する中で、自分を取り戻す時間を大切にしようと考えました。これまでの仕事に追われた日々ではできなかった「自分と向き合う」ことに集中しようと思ったのです。
会社員ではできないことをやってみようとも考え、あたたかい筆文字に惹かれたことを思い出しました。
退職したとき、「人はもっとあたたかいはず」
というどこか確信のようなものがあったと増田さんは言います。
手描きから「その人らしさ」が伝わる筆文字の講師になり、筆文字を教えることは、増田さん自身を取り戻すために必要な時間でした。
退職を機に始まったセカンドライフを、自分らしく充実させようと考えたのです。
こうして、増田さんは筆文字アートの講師としての活動をスタートさせたのです。それは会社員時代とは全く異なる、新しい自分の道の始まりでした。
増田玲子さんは、筆文字とコーチングを別々のものと考えるのではなく、深く関連したものとして捉えています。彼女がなぜそのように感じるようになったのか、その背景には彼女自身の人生経験と気づきが大きく影響していました。
筆文字との出会いは、まさに「見えるコミュニケーション」を手に入れることでした。
筆文字は、ただ言葉を並べるだけではありません。文字の形、太さ、色の選び方、空白の使い方—それら全てがその人の気持ちやメッセージを表現する手段となります。
増田さんは筆文字を学んでいく中で、自分の「感情」や「意図」が目に見える形で他者に伝わることの面白さに気づきました。
筆ペンを握り、色を選び、一筆一筆に自分の気持ちを込めて書き上げていくことで、「これが私の表現だ」という感覚を初めて味わったのです。
一方で、コーチングというのは、話す・聞くという「見えないコミュニケーション」のスキルです。
言葉の選び方や相手の言葉の受け取り方に注意を払い、相手がまだ気づいていない本音や真の感情を聴いていく。その過程では、話している内容以上に、相手の声のトーン、表情、間の取り方といった、言語化されない部分がとても重要になります。
コーチングセッションでクライアントの話を聴きながら、会社員時代に味わったいろんな感情をもとに、「人生にはいろいろ起きる」と深い共感ができるという増田さん。
コーチングを継続的に学び実践することが、増田さん自身の内面的な成長を促し、人間関係に対する深い理解をもたらしていると感じています。
増田さんは、筆文字の講座を通じてさまざまな人々と関わる中で、さらに大きな発見をします。
筆文字の講座では、参加者は自分の思いを言葉にし、色や筆の運び方を工夫しながら表現します。
最初は自信がなさそうにしていた人が、筆を走らせるうちに次第に集中し、書き終えた時には達成感に満ちた顔を見せるのです。その瞬間、彼女は気づきました。「筆文字は、その人が自分を表現する一つの方法なんだ」と。
自分の言いたいことを、話すのではなく「書く」という方法で表現することで、心がほぐれ、気持ちが整っていく。それによって、話すことが苦手な人でも、文字を通じて自分を表現することで「言葉にできること」が増えていく。
増田さんはこのプロセスを見て、筆文字とコーチングがコミュニケーションでつながっていると感じました。
自分の想いを「文字で表現する」ことは、コーチングの中で「自分の本心を言葉にして話す」ことに通じているのです。
コーチングでは、「話す」「聞く」が重要なコミュニケーション手段になります。一方、筆文字は「書く」「読む」という側面が中心です。
増田さんにとって、コーチングと筆文字は、全く異なる方法でありながら、互いを補完し合い、コミュニケーション全体を豊かにするものだと感じています。
増田さんは、「読む・書く・話す・聞く」が全て揃うことで、コミュニケーションが最大限に活性化されると考えています。
そして、筆文字とコーチングの両方を使っていくことで、人は自分の思いをより深く理解し、他者と本当に分かり合える感覚を得ることができるのです。
これまで「自分をどう表現していいかわからなかった」「本音を伝えるのが怖い」と感じていた人も、筆文字を通じて「目で見える形」で自分を表現し、コーチングを通じて「言葉にして伝える」方法を学ぶことで、徐々に自己表現が楽しくなり、自分に自信を持てるようになっていく・・・
増田さんは、これからも筆文字とコーチングを通して、さまざまな人々が自分を表現し、周りの人と豊かなコミュニケーションを育めるようサポートしていきたいと考えています。
それは、増田さん自身が「言葉にならなかった思い」を筆文字で表現し、コーチングを通じて自由に話せるようになった自分の姿に重なるからです。
「見えるコミュニケーション」と「見えないコミュニケーション」。この二つの力を繋ぎ、人々が自分らしい言葉を見つける手助けをすること—それが増田さんが目指す、筆文字とコーチングの合わせ技の物語です。
慎重で石橋を叩いて渡らないタイプ
行動に移す前に多くの時間をかけて準備をし、失敗を恐れて動けないことが多かった。
自己基盤の不安定さ
自分自身の感情や状態に無自覚で、周囲の状況に過度に影響されることがあった。
コミュニケーションの苦手意識
特に人間関係での摩擦が起きた際、相手との接し方や対話の仕方に困り、心の負担を感じることが多かった。
責任と感情の境界が不明確
周囲の期待や責任に押しつぶされそうになり、自分の感情をどのように整理するかがわからなかった。
自己理解と自己基盤の安定
自分自身をより深く理解し、感情や思考を整理するスキルを身につけたことで、心の安定を保てるようになった。
行動を重視するマインドセット
慎重な性格が変わり、まず行動してみるという姿勢を持てるようになった。これにより、挑戦を恐れずに新しいことに取り組むようになった。
他者とのコミュニケーションの改善
コーチングを通じて「傾聴」や「質問」のスキルを学んだことで、相手との対話の質が高まり、人間関係の改善につながった。
責任と感情の境界を明確にするスキル
自分の感情と他者の感情、責任を分けて考えられるようになり、周囲の状況に過度に振り回されることがなくなった。
リフレーミングの視点
自分の状況や課題を新しい視点で捉え直し、ポジティブに考える習慣ができたことで、自己肯定感が高まり、チャレンジ精神が芽生えた。
これらの変化が、増田さんの生き方を大きく変え、新たなキャリアや活動の道を切り開く原動力となりました。
1-新卒:精密機器メーカーに入社
初日から「ここじゃない」と感じ、転職を決意。
2-外資系企業2社目に転職・勤務
秘書、広報業務を担当し、会社員としてのキャリアを積む。
筆文字講座の講師として活動を開始
2021年3月:ICF認定ACC資格取得
2022年:「レトロキュートな筆文字アート」をオリジナル講座として考案し開講
現在:筆文字アート講師およびパーソナルコーチとして活動中
名前: 増田玲子(ますだれいこ)
職業:パーソナルコーチ、筆文字講師
学歴および職歴:
資格:
国際コーチング連盟ACC
HCJ認定メンタルコーチ
HCJ認定ヘルスコーチ
HCJ認定グループコーチ
NLPマスタープラクティショナー
HP:https://www.facebook.com/symphonie9choral