今回のクラスコーチインタビューでは、コーチングを通じて人生を大きく転換させた伊藤三恵さんのストーリーをご紹介します。
医療業界で長年キャリアを積みながらも、想定外の転機によって新たな道を切り開いた彼女。コーチングとの出会いがどのように彼女の思考を変え、独立を決意させたのか、そしてコーチングがいかに日常生活や仕事において「武器」となったのかを深掘りしていきます。
コーチングに興味を持つ方や、キャリアチェンジを考えている方にとって、彼女の経験は多くの示唆を与えてくれることでしょう。
動画は前編と後編に分かれています
伊藤三恵さんの起業までの道のりは、まさに「想定外の転機」によって大きく動かされたものでした。
大学卒業後、彼女は臨床検査センターで25年にわたるキャリアを積みました。当初は自分が1型糖尿病を抱えていることから、医療系の仕事に強い興味を持ち、臨床検査センターに応募したと言います。しかし、大学での専攻は食品工学であり、当時は医療系の資格を持っているわけでもありませんでした。それでも、医療分野で何か役立てる仕事がしたいという想いから、彼女はこの道を選びました。
キャリアの前半は薬の開発を支援する部門で12年を過ごしました。製薬会社から委託された薬の臨床試験データを集積し、解析に必要なデータを提供するという仕事でしたが、彼女はこれを「非常にやりがいのある仕事」として捉えていました。
転機が訪れたのは、営業の人材開発に携わるようになってからでした。新しい部署での挑戦に対して、彼女は「人と関わることが好き」という自分の特性を活かしつつ、営業所長や病院のお客さんに対する研修を行う機会を得ます。ここでの経験が、後のコーチングとの出会いへとつながっていきます。
彼女が初めてコーチングに触れたのは、営業人材開発の部署で、所長向けのコーチング研修を事務局として担当したときでした。その研修で事務局ではありましたが、コーチングの魅力を知り、自己の成長や人材育成にこれを活用できるのではないかと感じたのです。
その後、彼女はコーチングの勉強を続け、やがてコーチングを本格的に学ぶことになります。しかし、当時はまだ「独立」について真剣に考えることはなく、あくまで「会社での人材育成に役立てたい」という思いが強かったのです。
ところが、彼女が40代半ば、予期せぬ異動が待っていました。本社の人材開発本部への異動です。
この異動は彼女にとって「やりがいを感じていた営業の人材開発から離れる」ことを意味しました。
自分のキャリアが会社の都合で変わってしまうことに違和感を覚え、「本当に自分のやりたいことをするならば、今がその時かもしれない」と考えるようになったのです。
約1年の時間をかけて、彼女は独立を決意しました。その際、親や周囲の反対も予想されましたが、「どちらにしても後悔するかもしれないなら、やってみよう」という思いが、最後の決め手となったのです。
「コーチを学んで一番良かったことは?」と尋ねられたとき、伊藤さんは少し考えてからこう答えました。
「今この時点で思うのは、1つは結果的に武器になった。自分が仕事をしていく上でも、武器になってるなというのが1つ。」
この「武器」という表現には、コーチングが彼女にとって非常に実践的で役に立つスキルであることが込められています。
仕事の中で、そして日常生活の中で、自分を支えてくれる力強いツールになったのです。
さらに彼女は続けます。
「もう1つは、自分のことがよく分かるようになった。」
自分自身を深く理解することで、彼女は以前よりも自分の感情や反応をコントロールできるようになったと言います。
「色々自分に起きる出来事に対して反応が起きても、その反応を自分でマネージメントできるようになるというのは、やっぱり大きかったような気がしますね。」
伊藤さんは、この変化が彼女の生活や仕事に大きな影響を与えたと感じています。
特に「自分いじめ」と彼女が呼ぶ自己攻撃の習慣から解放されたことは、コーチングを学んで得た大きな成果の一つでした。
かつての伊藤さんは、何か問題が起きると「自分が悪いんだ」と自分を責める傾向が強かったそうです。
「自分に矢印が結構向いていたから」と彼女は語ります。
しかし、コーチングを学ぶことで、そのような自己攻撃が無意味であることに気づき、「じゃあそうならないためにどうするか」という前向きな思考へと変わっていったのです。
「コーチングを学んで一番良かったことは、そんな風に自分の思考が変わったことかな」
と彼女は締めくくります。この変化は、彼女がこれからの人生をより充実したものにしていくための、確かな土台となりました。
伊藤さんは、コーチングを特別なものというよりも、日常のコミュニケーションスキルとして捉えることの重要性を強調しています。
「コーチングって、応用できるものなので、自分のコミュニケーションのベースにすると、自分ももちろん楽だし、周りの人も自分のなりたい人生をサポートすることができたりする」と彼女は語ります。
さらに、伊藤さんはコーチングスキルの汎用性について触れ、英語力と同じように、それが一種の「武器」になり得ることを指摘します。
「結果的には武器になってるなっていう風に思うのは、やっぱり汎用性が高いからです」と彼女は説明します。
医療分野でのコーチングの可能性にも言及し、伊藤さんは各自が自分の所属する業界でコーチングを実践し広めていくことの意義を強調します。
「自分が在籍している業界っていう領域でどんどん使っていって周りに広げていけば、その業界自体が良くなっていくっていうのもきっとあるだろうな」と彼女は期待を込めて語ります。
伊藤さんは、コーチングの普及を波紋のイメージで捉え、一人の力には限界があるものの、学んだ人々がそれぞれの現場で実践することで、コーチングが当たり前のものになっていく可能性を示唆します。
「学んで勉強した人たちがそれぞれの現場でどんどん広げていってくれれば、それこそコーチングが当たり前のものになっていくっていうのは、いいなと思いますね」と彼女は熱意を込めて語ります。
最後に、伊藤さんはセルフマネジメントの重要性に触れ、自分自身の基盤を整えることの価値を強調しています。
「自分自身の心の基盤・関係性の基盤が整うっていうこの感覚をまずは皆さんが知って、周りの人もそれができるようになると、だいぶ人生楽になるんじゃないかって感じがする」と、彼女は締めくくります。
伊藤三恵さんのメッセージは、コーチングを学ぶ人々に対する励ましと、その潜在的な影響力への期待に満ちています。
彼女の言葉は、コーチングが個人の成長だけでなく、社会全体の向上にも貢献し得るという信念を反映しています。
コーチングを学ぶ前は、一生懸命に仕事をこなす女子社員として、縁の下の力持ち的な存在であった。しかし、自分自身の行動や選択に対して、深い自覚や責任感が不足していたと感じていた。
コーチングを学んだ後、自分の人生に対する責任感が飛躍的に高まった。自分自身をより深く理解し、自分の選択や決定に対して自信を持てるようになった。これにより、仕事やプライベートにおいても自分の意思をしっかりと反映させた行動ができるようになった。
コーチングを学んだことで一番大きく変わったのは、自分自身をよりよく理解し、自ら選択し、決定できるようになったことである。この変化により、自分の人生に対するコントロール感が増し、他者との関係においても自信を持って接することができるようになった。
名前: 伊藤三恵(いとう みえ)
職業: プロコーチ、研修講師
学歴および職歴:
伊藤三恵さんは、生物資源学科で食品工学を専攻し、卒業後、臨床検査センターに就職した。医療系の仕事に就くことを希望していたが、ペットフード会社なども受けた経験がある。臨床検査センターでは25年間勤務し、薬の開発や臨床研究の受託部署に在籍。さらに、営業部門の人材開発にも携わり、営業マン向けの研修や病院関係者に対するコミュニケーション・接遇研修を実施した。最後の1年は本部の人材開発部門に移動し、そこでの経験が独立を決意させた。
資格: ICF(国際コーチング連盟)認定MCC(Master Certified Coach)
コーチングスタート年: 2001年12月Facebook:https://www.facebook.com/mie.ito.52